篁の解説はこちらです。

篁の生存説の考察はこちらです。

はじめに
『SAKAMOTO DAYS』を読んでいて、
「このキャラ、めちゃくちゃ強い!」
「セリフが渋い!」
と感じる瞬間は多いですよね。
特に、ORDER所属の「篁(たかむら)」はその筆頭ではないでしょうか?
初登場時から圧倒的な強さを見せつけ、読者の度肝を抜きました。
彼のミステリアスな雰囲気と、底知れない強さを見ていると、ある伝説的なキャラクターを思い起こさせます。
そう、盲目の剣客『座頭市』です。
勝新太郎が演じた昭和の名作シリーズ、そして北野武監督による平成版リメイク。
どちらの『座頭市』も、独特の雰囲気と凄まじい剣技で観客を魅了しました。
この記事では、『SAKAMOTO DAYS』の篁と、映画『座頭市』の主人公(市)の間に見られる共通点を探り、なぜ篁がこれほどまでに「強すぎる」のか、その魅力の源泉に迫ります。
そもそも『座頭市』ってどんな作品?
「『座頭市』って名前は聞いたことあるけど、詳しくは知らない…」という方もいるかもしれませんね。
ここで簡単に『座頭市』について解説しましょう。
『座頭市』は、もともと子母澤寛の随筆集に登場する短い話の登場人物でしたが、これを元に俳優の勝新太郎が主人公「市(いち)」を演じた映画シリーズ(1962年~)が大ヒット。
その後、テレビドラマシリーズも制作され、国民的な人気を博しました。
物語の舞台は主に江戸時代。
主人公の「市」は、盲目の按摩師(あんまし)でありながら、「仕込み杖(しこみづえ)」と呼ばれる杖に隠された刀を遣う、居合(いあい)の達人です。
普段は飄々(ひょうひょう)としていますが、弱い者がヤクザや悪代官などに虐げられているのを見ると、その超人的な剣技で悪人たちをバッタバッタと斬り倒していきます。
「座頭(ざとう)」とは、かつて存在した盲人の階級の一つで、市はその階級に属しています。
「盲目」というハンデを背負いながらも、聴覚や嗅覚、気配を読む力などを極限まで研ぎ澄まし、健常者以上の強さを発揮する姿が、多くの観客の心を掴みました。
2003年には、ビートたけし(北野武)が監督・主演を務めた新しい『座頭市』が公開され、こちらも国内外で高い評価を受けました。
北野版では、金髪の市が登場したり、タップダンスのシーンがあったりと、独自のアレンジが加えられていますが、市の圧倒的な強さや、弱きを助け悪をくじく基本的な魅力は健在です。
つまり、『座頭市』とは、「普段は穏やかな盲目の按摩師が、実はとんでもなく強い剣客で、悪人を斬り捨てる時代劇アクション」と覚えておけば、大筋は掴めるでしょう。
この事から目の不自由な人を総じて「あんまさん」と呼んでいたそうです。
ただし現代ではこの呼び方に差別的な意味合いがあるとされ、「あんまさん」「按摩師」ではなくマッサージ師と呼ぶようになっています。
篁と座頭市、共通点の数々
一見すると時代も設定も異なる両者ですが、細かく見ていくと興味深い共通点がいくつも見つかります。
今回主に取り上げるのは北野武版です。
理由は単純に似ていると思われる点が多い為です。
北野武版では最後に盲目でないことが本人から明かされますが、実際の所は明確になっていません。
各自の解釈があると思いますが、北野武の前に市を演じていた勝新太郎からは基本的にどう改変しても構わないが「盲目であること」が条件だったそうです。
これを含めてこの記事では「盲目であることが条件だから盲目」「それでも武さんなりにぼかした」、この両方を間違っていない解釈としています。
目の描写:閉じられた瞳の奥にあるもの
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:常に目を閉じている
作中で篁が目を開けている描写は(この記事作成時点で)存在しません。
作中で特に言及がない為、彼が盲目だという事はないと思いますが常に目を閉じている状態です。 - 座頭市:常に目を閉じている(または閉じているように見える)
座頭市の最も象徴的な特徴です。
勝新太郎版では基本的に盲目ですが、超人的な聴覚や嗅覚で状況を把握します。
一方、北野武版では、終盤で実は目が見えていたことが示唆されます。
この「閉じられた目」は、両キャラクターのミステリアスさと、常人には計り知れない能力を象徴していると言えるでしょう。
扉の開け方:刀を使った独特の所作
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:刀で扉を突き刺して開ける
篁が建物に入る際、ドアノブを使わずに刀を突き刺し、そのままスライドさせて開けるシーンが印象的です。
これは彼の得体の知れなさや、常識にとらわれない行動を示す描写の一つです。 - 座頭市:戦闘中などに刀で扉を開けることがある
市も、特に乱戦の中などで、刀を使って障子や扉を破ったり、開けたりする描写が見られます。
篁ほど常態的ではありませんが、刀を用途に合わせて様々に使うという点で共通しています。
日常的な動作にさえ、自身の得物である「刀」を用いる。
この点も、両者の特異性を際立たせています。
扉を開けた後の表情まで酷似しています。
固定概念:ミスリードと本性
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:「テメェら俺のことボケてると思ってんだろ」
楽(ガク)との戦闘中、圧倒的な強さを見せる中で放ったこのセリフ。
普段の寡黙さや老齢な見た目、周りが「ボケている」と発言している事、作中も何かボソボソ言っている事から、「篁はボケている」と読者が思い込まされた所に、本人からの否定が入ります。 - 座頭市:盲目(と思われている)ことによる油断
市は、その風貌や「盲目」というハンデ(あるいは偽装)から、しばしば相手に侮られます。
しかし、いざという時には、その油断を突いて一瞬で敵を切り伏せます。
北野武版では、最終的に自身が盲目でないことを明かすシーンがあり、「座頭市は盲目」という固定概念からの驚愕の真実であり、これも一種の「自白」と言えるかもしれません。
「耄碌(もうろく)した老人」と「盲目の按摩師」。
どちらも社会的には弱者と見なされがちな属性ですが、その内に秘めたる実力は計り知れない。
このギャップが、彼らのキャラクターをより魅力的にしています。
髪:酷似した髪型と顔の角度
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:白髪で老人
篁は白髪で老人の見た目をしています。
また常に顔が俯いた角度で描かれています。 - 座頭市(北野武版):白髪(薄い金髪)で老人
北野武版の市もまた、白髪に近い薄い金髪であり老人です。
撮影当時は56歳だったので老人と呼ぶにはまだ早い年齢だと思いますが、座頭市の中の北野武さんは老人に分類される見た目です。
こちらは時に正面を向くことはありますが、戦闘中などは顔が少し俯いた描写が印象的です。
2人を見比べて感じますが明らかに北野武版に寄せた外見です。
篁の場合は髪型がオールバックではありますが、それも気にならないくらい外見が似ています。
姿勢と雰囲気:猫背に隠された実力
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:常に猫背気味
篁は立っている時も座っている時も、どこか力の抜けたような猫背気味の姿勢で描かれることが多いです。
これが油断を誘う一因にもなっています。 - 座頭市:常に猫背気味
市もまた、着流し姿でやや猫背気味に歩く姿が印象的です。
飄々として掴みどころのない雰囲気を醸し出しています。
リラックスした、あるいは年老いたように見える姿勢。
しかし、それは油断ならぬ実力を隠すためのものかもしれません。
両者ともに、その姿勢からは想像もつかないほどの身体能力と剣技を持っています。
戦闘スタイル:居合斬りの達人
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:居合による一瞬の斬撃
篁の戦闘は、まさに電光石火。
抜刀から納刀までが一瞬で、相手は斬られたことにも気づかないかのような描写が多く見られます。
複数の敵を一瞬で切り伏せるシーンは圧巻です。
他にも相手の方に向き直らずに刀を突き刺す描写もあります。 - 座頭市:逆手持ちからの高速居合
座頭市の代名詞とも言えるのが、仕込み杖(刀)を逆手持ちで抜き放つ高速の居合斬りです。
目にも止まらぬ速さで相手を斬り捨てます。
篁同様相手の方に向き直らず、後ろ向きに刀を突き刺すシーンがあります。
両者とも、刀を抜き放つ「居合」の技術を極めており、戦闘においては一瞬で決着をつけるスタイルが共通しています。
この圧倒的なスピードと破壊力が、「強すぎる」と言われる所以でしょう。
強さの次元:作中最強クラスの実力者
©鈴木裕斗・集英社 / 「SAKAMOTO DAYS」
- 篁:ORDERの中でも別格の存在
殺し屋組織「ORDER」のメンバーは皆トップクラスの実力者ですが、篁はその中でも頭一つ抜けた存在として描かれています。
他のメンバーからも一目置かれ、恐れられている節すらあります。
まさに作中最強候補の一人です。 - 座頭市:敵なしの無類の強さ
座頭市も、登場する作品においては無敵の存在として描かれます。
どんなに腕の立つ用心棒や多数の敵に囲まれても、最終的には切り抜けて勝利します。
それぞれの作品世界において、他の追随を許さない「最強」クラスの剣士であるという点も、大きな共通点です。
ちなみに北野武版『座頭市』のポスターやDVDのパッケージには「最強。」という文字のみ記載されています。
まとめ:篁は『SAKAMOTO DAYS』における座頭市の再解釈か?
ここまで見てきたように、『SAKAMOTO DAYS』の篁と映画『座頭市』の主人公には、驚くほど多くの共通点が存在します。
- 閉じられた目
- 刀を使った独特の所作(扉の開け方)
- 人間社会の「悪」への嫌悪感
- 見た目と実力のギャップ(油断を誘う雰囲気)
- 猫背気味の姿勢
- 居合を主体とした戦闘スタイル
- 作中最強クラスの実力
寡黙で、ミステリアスで、そして何より「強すぎる」篁。
死亡したとされていますが、本編に今後登場するか気になるところです。
この記事を読んで、『SAKAMOTO DAYS』を読み返したり、『座頭市』の映画を観てみたくなったりしたら幸いです。
あなたが見つけた他の共通点などがあれば、ぜひコメントで教えてください!
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