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世紀の反逆、エネミーゼロ事件を起こした天才ゲームクリエイター飯野賢治という人間。

Kenji Eno ゲーム
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はじめに

近年ゲームクリエイターにスポットが当たることがあります。

「星のカービィ」「大乱闘スマッシュブラザーズ」の生みの親で
現在は有限会社ソラの代表取締役である桜井政博さん。

対戦型格闘ゲームの「鉄拳」のプロデューサーで
大会の優勝カップの授与など積極的に表舞台に出ている原田勝弘さん。

日本には本当に素晴らしいゲームが沢山あり、
また素晴らしいゲームクリエイターも大勢います。

今回は世紀の大事件を起こし、天才・奇才とも言われたゲームクリエイターの話です。

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飯野賢治

数々の人間に影響を与えた男

飯野賢治さんはゲームクリエイターであり、経営者であり、作家であり、妻子を持つ人でした。

Dの食卓という作品で一気に知名度を上げ、周りから天才やゲーム業界の新生と
呼ばれるようになった飯野さんですが、天才と呼ばれるまでの道のりは険しい物でした。

飯野さんは青年期に高校を中退し、大検に落ち自分の人生について悩んでいたそうです。
そんな時、小学高学年の時にゲームコンテストで賞をもらった事を思い出し、
ゲーム会社に就職しようと決意します。

当時18歳だった飯野さんはなんとかゲームの下請け会社に就職することができ、
企画者、作曲者として活躍されました。

念願のゲーム会社で働くことが出来た飯野さんでしたが扱う作品は、キャラゲーや移植物ばかりで
自分が思い描いていた”ゲームクリエイター”の仕事は扱っていなかったそうです。

そんな時、企画を持ち込んだ会社で「自分の会社を設立してみてはどうか」と
言われたことをきっかけに、飯野さんは入社一年で会社を辞め自分の会社を設立します。

かおる
かおる

ちなみにここで持ち込んだ会社はHAL研究所です。
翌年桜井政博さんが新入社員として入社する会社です。

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冒頭で出てきたDの食卓はこの会社設立あたりで企画されていたそうですが、
どこのメーカーにも興味を持ってもらえず、結局前と同じ下請けの仕事に追われる日々でした。

「折角独立したのに自分のやりたいことをやれない。」

飯野さんはふさぎ込んでいる内に同じ志を持って会社を辞め着いてきてくれた従業員達は
一人また一人と退社してしまい、最終的に会社を畳むことになります。

かおる
かおる

並行してゲーム関係の専門学校で講師を務めていたそうです。

会社を失ってしまった飯野さんですがその溢れる創作意欲は止められませんでした。

「どこも興味を持ってくれないなら、自分達で作れば良い。」

飯野さんは残っていた従業員3名と新たな会社ワープを設立します。
翌年に彼と当時の会社名を世に広める作品となるDの食卓が発売されます。

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ハードメーカーに反逆した男

当初は3DOという機種で発売されたDの食卓ですが、作品が世に注目されたことで
同年にセガサターン、プレイステーションに移植されることが決まります。

発売された同年に別の2機種に移植と言うこともあり移植作業は困難を極める物だったそうです。
特にプレイステーションは飯野さん自身もポリゴン技術を手放しで褒める程の性能で、
移植の際にゲームのグラフィック部分を1から作り直したそうです。

かおる
かおる

開発当時はUnityやUnreal Engineなどの便利な開発ツールがなかったため、

文字通り1からゲームを開発しなければいけない環境でした。

渾身の移植作を作り上げたワープですが、飯野さんが提示した初回出荷本数と
プレイステーションの発売元であるソニーの提示した初回出荷本数に食い違いが発生します。

最終的に飯野さんの希望は通らず、各地のゲーム販売店では売り切れが続出したそうです。

「売り切れからの再販が遅すぎる。」
「何故ハードメーカー側が出荷枚数を決めるのか。」

この一件から飯野さんとソニーの確執が深まり始めます。

かおる
かおる

写真では長髪で少し強面な印象ですが、

ラジオなどではとても気さくで面白い方です。

伊集院光さんとラジオで共演した際は

楽しそうにゲームの話で盛り上がっていました。

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エネミーゼロ事件

サターンへようこそ

ソニーとのいざこざがあり、わだかまりを持ったままの両者でしたが
ソニー主催のプレイステーションエキスポという新作ゲームの体験会への出展が決まります。

エキスポではワープの新作ゲームであるエネミー・ゼロの発表をする予定でした。

しかし飯野さんはDの食卓移植の一件以降、
このままソニーのハードでゲームを発売していくかどうか悩んでいました。

飯野さんは高熱を出すほどまで悩んだ末に、Dの食卓で移植されたもう一つのハード
セガサターンの販売元であるSEGAの社長に話がしたいと面会を希望します。

SEGA側はすぐさま面会の場を設け、社長と幹部数名と飯野さんとの面会が実現しました。

面会では飯野賢治はどういう人間なのかという話題から始まりました。

”新作ゲームを宣伝する人間”の話ではなく”飯野賢治”として話を進めるSEGA側に対し、
元々人情味の深い飯野さんは徐々に気持ちが揺らいで行きます。

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エキスポ当日、飯野さんはワープの新作発表でとある仕込みを用意していました。

ワープの新作発表を今か今かと待っている来場者はワープの画面に釘付けです。

会場が暗転し画面に文字が浮かび上がります。

enemy zero

プレイステーションでの
スクウェアのCD製造の
値段や流通の方法が違ったら
「みんな平等」といっていた
ソニーを僕は許さない。

enemy zero

会場が騒然とする中、ロゴが変わるアニメーションが流れます。

ソニー主催であるプレイステーションエキスポで、
新作ゲームをライバル企業のSEGAのセガサターンから発売する旨の発表となりました。

画面にはSEGA社長の顔と「サターンへようこそ」という文字が浮かんでいました。

以上がエネミーゼロ事件の概要です。

かおる
かおる

SONYの祭典でライバル企業のSEGAの宣伝…

例えるとドラフトされた選手が球団球場で関係者、ファンの前で

ライバル球団に行きますと宣言するようなものですよね。

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代表作

飯野賢治さんが手掛けた管理人が思う代表作を4作品紹介します。
今回はネタバレを避けて紹介しています。

Dの食卓

Dの食卓は当時としては珍しかった3DCGを用いて制作されており、
ゲーム内のムービーは映画の様なカメラワークを用いた対話的な演出が特徴な作品です。

物語は1997年のロサンゼルス総合病院にて主人公の父親である名医リクター・ハリスが
突如凶行に走り、患者やスタッフを射殺し、病院に立て籠るところから始まります。

主人公のローラは、父を説得するために病院へ向かいますが、
途中で異次元空間に引きずり込まれリクターの精神世界である古城に迷い込みます。
プレイヤーは、古城内のトラップを避けながら(現実時間で)2時間以内の脱出を目指します。

かおる
かおる

ちなみにゲームのシナリオ、音楽は飯野さん自らが制作しています。

Dの食卓2 -D2-

Dの食卓2は前作Dの食卓の続編として発表されましたが内容は異なります。

物語は2000年12月25日にカナダ上空で起こるハイジャック事件から始まります。
主人公のローラ・パートンは飛行機内での居眠り中に所持品であるコンパクトを落としてしまい
拾い上げたところで機内でハイジャックが発生します。

同乗していた男性がテロリストに応戦する中、
突如上空から隕石降りが飛行機に命中してしまい雪原に墜落するのでした。

今作はアドベンチャーパートとガンシューティングパートに分かれており、
前者では前作の様な探索をすることができ、
後者では敵を倒すことで経験値を得てレベルアップすることが出来ます。

かおる
かおる

Dの食卓2の敵は人間が変異したもので、「咲く」と表現されています。

 

別のゲームになりますが零~月蝕の仮面~でも怨霊の顔が歪み
“咲く”という顔が分からなくなる状態がありました。

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エネミー・ゼロ -E0-

エネミー・ゼロは敵の姿が一切見えず、音を頼りにゲームを進めるゲームです。

物語は、地球帰還中の宇宙船で緊急事態が発生し、
乗務員がコールド・スリープから覚める場面から始まります。

主人公のローラ・ルイスが他の乗務員と連絡を取ろうとしますが、
回線不良で繋がらず違和感を感じる主人公、すると突然同僚の乗組員の部屋の扉が破壊され
中では乗組員が見えない敵によって惨殺されてしまいます。

ローラは困惑しつつも何が起こっているのか、他の同僚は無事なのか、
現状を把握するために自分の部屋から出て船内の探索を始めるのでした。

本作もDの食卓2と同様にアドベンチャーとアクションで構成されており、
前者ではアイテム収集や謎解きを行い、
後者では音で位置を推測する「VPS」を駆使して見えない敵と戦います。

かおる
かおる

エネミー・ゼロの初期のテレビCMは飯野さん本人が出演していました。

20万円20箱限定BOX

エネミー・ゼロは生産限定盤が20個限定で発売されています。
価格はなんと20万6,000円と超高額商品でした。

中身は飯野さんのサイン入りゲームソフト、帽子、VHSなどのエネミー・ゼロ関連のグッズが
椅子くらいの大きさの木箱に入っており、20個全て飯野さんが直接購入者へ届けて回ったそうです。

リアルサウンド 風のリグレット

風のリグレットは映像を一切使わず音声のみのストーリー展開が特徴です。

物語は主人公の野々村博司が小学時代の隣の席の女の子と台風を見る約束をしたものの、
約束の時間に彼女が現れず、転校してしまった過去の思い出を描いています。

本作は視覚障害者に配慮した作りとなっており希望者には郵送で点字の取扱説明書を送付したり、
テレビではなくオーディオ機器でのプレイも可能でした。

またゲームはプレイヤーが音声のみを聞きながら行動を選択しストーリーを進めます。
選択肢にはストーリーに影響を与える「シーン分岐選択肢」と、
主人公の心情に影響を与える「パラメータ選択肢」があり
エンディングはプレイヤーの選択次第で変化するものでした。

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書き終わって管理人が感じた事

飯野さんに関する記事や本を読んで管理人が感じた事を書いていきます。

現在残っている映像やラジオの音源、著書などから感じ取れますが
”ゲーム制作という呪いに憑りつかれた人間”という印象が強くあります。

ゲームが本当に好きでたまらなく、ゲームについて考える事を辞められない。
エネミーゼロ事件でもわかるように例え後悔する結果になっても
ゲームに対しては正直に生きていきたい。
また社長と言う立場でありながら、メーカーに対する歯に衣着せぬ辛辣な意見や
ソフト制作側の心の主張を話されており強い信条を持っている方だと感じました。

管理人は飯野賢治さんを知ったのが亡くなられてからです。
「亡くなるには早すぎる」という月並みな言葉だと安っぽくなってしまうので使いませんが、
ここまで様々な業界の著名人に支持されている方が、ご存命だったらと想像してしまいます。

ゲーム好きの飯野さんの今の技術のゲームの感想を聞いてみたかったです。

今のゲーム業界の事をどう思うのか。
VRではどんなゲームを生み出していたのか。
chatGPTなどAIにはどんな見解を示すのか。

はじめに」で出ているお二人は自身のYouTubeチャンネルを持っており、
ゲーム制作の裏側などを話されていてとても興味を惹かれる内容ばかりです。

飯野賢治さんもご存命であれば是非YouTubeなどで発信して欲しかったです。

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最後に

飯野賢治さんの人間性は少しでも伝わったでしょうか。

紹介したゲーム、特にエネミー・ゼロは万人受けする訳ではないですが
未だにカルト的人気のある作品です。

飯野賢治さんを知らなかった方が本記事を読んで興味を持っていただけたなら幸いです。

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